断崖絶壁に建てられた僧院
ブータンにおいて熱烈な信仰の対象になるパドマサンババ(グル・リンポチェ)。
彼が、8世紀に虎の背中に乗ってこの地に降り立ったとされる。
そしてここの洞窟で瞑想を行ったという場所。
タク=虎、ツァン=隠れ家という意味があるそうだ。
チベット世界の遠方より、この地に巡礼の為沢山の人が訪れる。
ブータンの旅の中でも楽しみにしていた場所だった。
この僧院にまつわるストーリーに惹かれたというよりも、この絶壁に建っている見た目のインパクトに惹かれた。
人を寄せ付けず、俗世間からの接触を一切断ち切るような威厳のある佇まいに、一度見てみたいと思った。
寺と山と川が延々と続くブータンの旅のクライマックスもやっぱり寺だった。
ツアーガイドに連れて来られたのは、僧院が建つ岩山の麓にある駐車場。
目の前に聳える岩山の頂上付近に、ポツンと白い建物が見えた。
見上げるその僧院への道は、その時点では全く確認出来なかった。
ガイドによると、途中までは馬でも登れるらしいが、自分はツアーガイドの案内で天空の僧院を目指すことにした。
針葉樹の山道を上下しながら歩いていく道中には、たくさんの野良犬があちこちで昼寝をしている。
登山客の後ろを着いていったり、水飲み場の水を拝借したり。のんびりした空気を演出してくれた。
1時間ほどして途中の休憩ポイントでティータイム。ふと見上げる空には、まだまだ遠くにある天空の僧院が確認できた。
そこから更に1時間ほど歩くと、岩肌に張り付く僧院の姿を間近で確認できる所まで登ってくる事ができた。
割りとハードな道のりだった。
基本的にブータンの都市は標高が高く、この僧院があるパロの標高は2300m程だという。
そのせいか、息が切れるのが早く、足が重くなる感覚が断続的にあったように思う。
僧院に入る際は、荷物は全て預けなくてはならず、中の様子は自分の記憶と網膜に焼き付けるしかない。だから中の様子は行った人にしか分からないという特典が与えられた。
更にはタクツァン僧院の断崖からは、絶景を眺める事ができた。
ずっと遠くには、自分たちが出発した駐車場も確認できたが、それはこの後、来た道をまた同じ道を戻らなくてはいけないという事も意味していた。。
こんな絶壁に、よくこんな建物を建てたものだと感心した。
聞くところによると、元々この僧院は1694年に建てられたが、1998年に本殿の火災により多くのものを喪失してしまった。その後国王の先導のもと、修復作業が行われたそうだ。
この天空の僧院を目指すには、歩きやすい靴を履いていくのがベスト。
スノーブーツを履いていってしまったので、踏ん張りも効きづらく、登ってるうちに暑くなりちょっと後悔した。
もう一度行きたいかと言われれば、行きたいとは思わないが、
天気が良くて、心地のいい陽気の中のトレッキングはとても清々しい体験だった。
ブータン観光の中ではかなりの高得点だったのは間違いない。