父島に来て、行ってみたかった場所。
それは、『南島』という島だった。
父島から南西に約1kmに浮かぶ南北約1.5km、東西約400mの小さな無人島。
平成20年3月には「小笠原南島の沈水カルスト地形」という名称で国の天然記念物に指定されている無人島だ。
島の自然保護のため、現在は入島制限を設け、
1日の入島人数は100人まで、上陸時間は2時間まで。
尚且つ、東京都認定の自然ガイドが同行しないと入島はできないことになっている。
そして、この島には映画のロケ地になりそうなプライベートビーチがあった。
正式には『扇池』と呼ばれる。
外海とトンネル状につながる扇池は、エメラルドブルーと白い砂浜のコントラストが非常に綺麗で、
現実離れした景観に言葉が出なかった。
ジブリ映画『紅の豚』で、マルコという豚人間が、真っ赤な飛行艇の傍ら、
ラジオを聴きながら新聞を読んでいる光景が目に浮かんだ。
父島から出港した小さな船は、海のうねりを受けながらも、南島に上陸することができた。
静まり返った無人島は、別世界に来たような独特な雰囲気に包まれていた。
植生回復の為に、手入れされた小道の中を丁寧に歩いていくと、島が一望できる高台に着いた。
その高台からは、ボニンブルーの海が一望できた。
今までに見たことのない青のグラデーショが印象的だった。
遠くの岩壁に見えるのは、ハートロック。
うっすらとハートの形をした岩壁が見える。
完璧なロケーション。
何十年、何百年という時間経過の中で、自然が作り出した作品を前に、
圧倒されるのみだった。
切り立った岩壁も、白く輝く砂浜も。
エメラルドグリーンからボニンブルーへと移り変わる青のグラデーションも。
何もかもが絶妙すぎて、形容する言葉が見つからない。
小笠原における自然のエネルギーは、海からも山からも、生き物からも、どこにいても伝わってくる。
自然という巨大な生命体が、静かに、力強く呼吸をしているのを、肌で感じることができる。
片道25時間半の移動をも相殺してくれる感動が、ここには必ずある。